債務系法律オフィスを戦慄させる出来事が起こった。あのネオラインキャピタルが、3月31日付けで、プロミスの完全子会社だったタンポート(旧クオークローン)を企業買収し、自社の完全子会社にしたのだ。
論題は、プロミスが買収時、プロミスがタンポートのお客様に金銭を貸して、そのお金をタンポートに返金するスタイルを作られていて、契約がタンポートからプロミスに切り替わっている場合だ。今まではプロミスの子会社ということで、タンポートの過払い金をプロミスが払っていた。今後はどうなるのか?
プロミスの回答は次の通り。「プロミスがお客さんに貸し付けて、お客さんはその貸し付けた金をタンポートに支払ったわけだから、その時点でタンポートに過払い金発生している。タンポートの過払い金は今までプロミスで払っていたが、今後はプロミスとは関係ないから、タンポート自体に請求してほしい。プロミスはそれとは独立して貸金債権があるから、それはそれでうちに支払ってもらわないと困る。」
※タンポート債権は、上記のようにプロミスとの契約に切り替えられたものと、プロミスに債権譲渡されたものとがある。債権譲渡分についてもプロミスは「うちは債権を譲渡されただけで債務を引き受けた訳ではない。うちが債権譲渡を受けた後に発生した過払い金は払うが、譲渡時点で確定していた過払い金はタンポートの請求してくれ。」ということになる。
※タンポートからプロミスに譲渡された債権は、さらにネオラインキャピタルに譲渡されていることが多い(09.8.2追加)。
ステーションファイナンスもネオラインの子会社になったとたん、回収方針が格段に厳しくなった。タンポートはプロミス子会社時代は過払い金を全額返還してくれていたが、ネオラインキャピタルの子会社となったことで、過払い金回収がそう簡単にはいかなくなる可能性がある。
タンポートという会社
タンポートはリッチ株式会社として出発。リッチは00年5月にプロミス株式会社の子会社となり、02年4月、シンコウ、東和商事を吸収合併し、商号も株式会社ぷらっとに変更となった。当時プロミスは金利フルライン戦略をとっていた。顧客をハイリスク、ミドルリスク、ローリスクの3グループに分け、ぷらっとが29%程度の金利でハイリスク客を、プロミスが25%程度の利息でミドルリスク客を、アットローンが18%の利息でローリスク客を獲得するという作戦だった。
その後05年、プロミスはクオークと提携、クオークが物販、旧ぷらっとが貸金を営むという戦略のもと、ぷらっとはクオークローンに商号を変更した。しかしクオークとの提携は結局解消され、貸金業関連法改正でグレーゾーン金利の廃止が確実になると、ハイリスク客向け金融というビジネスモデル自体成り立たなくなり、クオークローンはプロミスグループのお荷物でしかなくなった。
結局全店舗が閉鎖され、07年12月、クオークローンからタンポートに会社名変更。新たな貸し出しはせず、既存債権の回収だけをする会社となった。そして、プロミスは旧タンポート顧客に借り換えを案内、プロミスが金を貸し、タンポートに金を返させるようにした。こうした借り換えが進み、タンポートの顧客の多くが、こういった実態がよく理解できず、単純に「タンポートがプロミスになった」という認識でいた。
タンポートは超黒字会社
タンポートは「うちはもう廃業しているので過払い金は7割返還でお願いします」だなどと言っていたが、タンポートは大変な黒字会社である。タンポートのB/S(貸借対照表)の数字を拾ってみよう。
現金預金が46.39億円、営業貸付金が77.94億円、短期貸付金が110億円、土地が5.36億円で、これだけで合計239.69億円になる。
他方、短期借入金は0.2億円、未払い金3.14億円、長期借入金0.03億円、退職給付引当金3.13億円、その他負債らしい負債は1.5億円くらいしかない。その合計額はたったの7.8億円しかない。
営業貸付金77.93億円に対し、貸倒引当金は39.84億円、利息損失引当金は95億円、積みすぎではないか。利息損失引当金の貸付金に対する比率はなんと121.9%。以下の大手4社の引当率に比べ、どれだけべらぼうかがよく分かる。
武富士 貸金残9959億円 引当金4638億円(55.7%)
アコム 貸金残1兆3532億円 引当金3016億円(22.3%)
プロミス 貸金残1兆6101億円 引当金2459億円(15.3%)
アイフル 貸金残1兆4062億円 引当金1319億円 (9.3%)
タンポートの短期貸付金110億円
タンポートのB/Sにある110億円の短期貸付金。この中身をご存じだろうか。これは全額プロミスに対する貸付金なのである。プロミスは「お金のないタンポートに変わって責任感からタンポートの過払い金を払っている」のではない。タンポートに対する借金の返済のために、過払い金を立て替え払いしているのである。
タンポート債権をプロミスはネオラインにいくらで売ったか
Wikipediaによると「(プロミスは、タンポート=クオークローン及びサンライフの)株式と、(タンポート、サインライフから)プロミスやパル債権回収に譲渡された債権をネオラインキャピタルに売却し、株式の売却額は、それぞれわずか1円で実質無償譲渡に近い。債権207億円の売却額は約94億円)した。」とある。
なお上記サンライフとは、四国の地場金融業者で、プロミスの子会社だった会社。
※09年7月13日追加
業務提携契約
プロミスは、その完全子会社たるサンライフ株式会社、クラヴィスとの間で、平成19年6月18日付で、「プロミスグループ国内金融会社再編における合意書」なる業務提携契約を締結している。
プロミスは、クラヴィス、サンライフの顧客に、プロミスとの契約切替を促し、応じなかった客の債権は債権譲渡によりプロミスに移転させるという方法をとった。契約切替に関して、プロミスは同契約でクラヴィスに次の業務を委託している。
切替契約を希望する顧客から、その申込を取り次ぐ業務
そうして申込んできた顧客に、申込書、パンフ等を送付する業務
上記に付随する業務
また同契約で、こうしてプロミスの顧客となった者が過払金返還を求めてきた場合、クラヴィスが負担する過払金についても、被告プロミスとクラヴィスが連帯して責任を負い、その他顧客との全ての紛争に関する窓口を被告プロミスとすることとなっていた。
借換ではなく、契約切替
クオークローン、サンライフ、プロミスが連名で借り換えを要請した。借り換えの際に、借主は「残高確認書兼振込代行申込書」という書類への署名捺印を求められている。この書類は、次のような文面だ。
プロミス株式会社/株式会社クオークローン御中
私は、プロミスグループ再編により、株式会社クオークローンに対して負担する債務を新たにプロミス株式会社からの借入により完済する契約の切替について、以下の1から4の内容を確認・依頼・同意のうえ署名します。
ご署名欄
株式会クオークローンのおける、私の債務の本日付の元本合計は次の通りです。
株式会社クオークローンにおける私の債務を完済するため、次の口座への振込代行を依頼します。ジャパネット銀行・本店営業部・普通預金口座・3518261
株式会社クオークローンとの契約に係る書類、及び交付される領収証の取扱いを次のとおりとします。※破棄、郵送、その他を選択し、郵送先を特定
契約切替後のお問合せ窓口、および株式会社クオークローンにおける本日までの取引に係る紛争の窓口は、従前の契約先に係わらずプロミス株式会社となることに異議はありません。
この書面では「契約の切替」と言う言葉が使われている。同グループ内での債務の付け替えと言って良いだろう。
クラヴィスに対する過払金をプロミスから回収できるか
形式的に見れば、プロミスから借りて、クオークローン(その後タンポート、現クラヴィス)に返済したのだから、クオークローンに対する過払金債権が発生し、プロミスに対する貸付金が発生することになる。しかし、何とかして、プロミスに対して過払金の返金を請求できないか。過払金債権者側の弁護士は頭を悩ませている。
平成22年4月8日付名古屋地裁一宮支部判決は、次のように判示して、プロミスはクラヴィス時代に発生した過払金についても支払義務を負うとした。
プロミスは、契約切替が顧客にとって有利であるとして、これに応じるように勧誘し、承諾を得た顧客との間で、新たに基本契約を交わすとともに、顧客から承諾書を取りつけて、新たに貸付けた金をクラヴィスの銀行口座に送金することでクラヴィスからの借入金を完済させた。こうした契約切替手続はクラヴィスの顧客に対する債権債務と同額の債権債務をプロミスと顧客との間に生じさせて、三者の債権債務関係を整理、清算しようとするものであると認められるから、顧客とクラヴィスとの間の取引と切替手続による顧客とプロミスとの間に借入及び返済に係る取引とは、事実上一個の連続した貸付取引として引き直し計算するのが当事者の意思に合致する、というのである。
もう一つの理論
別の観点から、プロミスの責任を認める判決も登場した。
プロミスは、結局この一連のプロセスで、子会社の再編の一環として、クラヴィスの顧客の中から優良顧客を選別し、自社の顧客として取り込む経営方針を建てて、業務提携契約書を締結したものである。契約時点で、契約顧客からの過払金請求を受けることを十分認識した上で、同請求に対して連帯して責任を負うこととしたものとである。
そこから、プロミスはクラヴィスから過払金債務を承継したとして上記判決と同様の結論を導くのである。
敗訴リスクにも注意
この問題について、反対の判例もあり、プロミスの責任が確定したという訳ではない。もし敗訴した場合、最悪訴訟中に26.28%(最高貸付額が10~100万円の場合)の損害金が加わる可能性もある。そこが悩むところだろうが、争う価値はある。
クラヴィスがさらなる減額を主張
クラヴィスはちょっと前まで、1割での和解(1割カットではなく、9割カット)を求めていたが、最近5%というようになり、最近は3%をいうようになった。(10.2.10)
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